温泉に関する日々のネタ帳

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温泉狂

温泉権と温泉集落を研究する傍ら、秘湯も時々訪ねたい温泉狂です。(T_T)
写真は大深温泉オンドル宿舎

雑記

温泉に関するコラム風の備忘録です。

温泉の集中管理

  • 源泉かけ流しと温泉の集中管理

    大滝温泉共同浴場桑原の湯

    巷で評判の源泉掛け流しと温泉の集中管理は相反する温泉の利用形態だが、全国の温泉の集中管理の実態はどうなっているのだろう。温泉狂の手元の文献に、温泉の集中管理について、記したものがいくつかある。「平成2年版温泉必携」と「温泉権の研究」と「温泉権」である。温泉狂の調査した大滝温泉もかなり古い時代から温泉の集中管理に着手している。
    写真は大滝温泉共同浴場桑原の湯-部外者禁止の張り紙が見える。

  • 大滝温泉の温泉集中管理

    大滝温泉集中管理用タンク

    昭和3年、秋田県指令薬15によって、大滝部落民は温泉利用に関する特権を有せしむることとされ、温泉に関する旧慣上の権利を県より承認されることとなったが、昭和27年には、湯量不足の懸念も手伝って、大滝部落は温泉管理を十二所町に移管する協定を締結することとなった。
    ところが、同年、花岡鉱山健康保険組合が大滝部落内にある保養所の飲料水確保のため、対岸の軽井沢部落と協議して、軽井沢五輪岱84番地内に井戸を掘削、湧出がなかったため、さらに五輪岱143番に別の井戸を掘削したところ、予想以上の温泉が噴出し、大滝温泉の源泉が枯渇してしまった。(昭和28年9月)しかし、井戸の閉塞をもってしても、大滝の源泉は従前の湯量が回復しなかったので(従前の湯量の三分の一)、大滝の湯量不足の懸念は更に増し、泉源統一に拍車がかかるが、集中管理の工事にはなかなか着手できなかった。
    「温泉権」で述べられているような、「温泉に関する権利の集中管理-温泉権の処分という法律上の問題とその適切な処理」や温泉狂のWebにあげられている大滝温泉独自の温泉権の処理に時間がかかったのかもしれない。
    そのような中、昭和48年、大滝温泉を有する大館市が、温泉の効率的利用を図るため、総工費5300万円をかけて5号井を循環式とする集中管理の工事に着手し、昭和49年8月落成式を挙行し、大滝温泉は温泉の集中管理に名実ともに移行することとなった。
    写真は集中管理用のタンク。古地図でいえば薄の湯あたりであろうか。

  • 全国の集中管理を行っている温泉

    銀山温泉

    しかし、手元の文献(「平成2年版温泉必携」(財)中央温泉研究所調べとある)には、大滝温泉が集中管理を行っている実態は報告されていない。
    報告されている集中管理の温泉は、北から弟子屈温泉(地方)、湯の川温泉(地方)、阿寒湖畔温泉(組合)、洞爺湖温泉(組合)、大鰐温泉(地方)、黒石温泉郷(地方)、浅虫温泉(組合)、東八幡平温泉郷(地方)、瀬見温泉(地方)、鶯宿温泉(民間)、繋温泉(民間)、遠刈田温泉(民間)、銀山温泉(組合)、湯田川温泉(組合)、天童温泉(組合)、東根温泉(組合)、上山温泉(組合)、赤湯温泉(組合)、小野川温泉(組合)、寒河江温泉(組合)、温海温泉(民間)、飯坂温泉(地方)、磐梯熱海温泉(地方)、檜枝岐温泉(地方)、熱塩温泉(地方)、いわき湯本温泉(地方)、湯野上温泉(民間)、上塩原温泉(地方)、大子温泉(地方)、猿ヶ京温泉(地方)、草津温泉(地方)、伊香保温泉(組合)、三宅島温泉(地方)、湯河原温泉(地方)、箱根仙石原温泉(民間)、越後湯沢温泉(地方)、弥彦温泉(地方)岩室温泉(地方)、松之山温泉(地方)、妙高温泉(組合)、赤倉温泉(組合)、宇奈月温泉(民間)、山代温泉(地方)、山中温泉(組合)、片山津温泉(組合)、和倉温泉(民間)、石和温泉(地方)、春日居温泉(地方)、葛温泉(地方)、大町温泉郷(地方)、木崎湖温泉郷(地方)、昼神温泉(地方)、上諏訪温泉(地方)、別所温泉(地方)、山田温泉(地方)、奥山田温泉(地方)、浅間温泉(組合)、新浅間温泉(組合)、美ヶ原温泉(組合)、乗鞍温泉郷(組合)、鹿教湯温泉(民間)、穂高温泉郷(民間)、下呂温泉(組合)、熱海温泉(地方)、土肥温泉(地方)、松崎温泉(地方)、堂ヶ島温泉(地方)、吉奈温泉(組合)、修善寺温泉(組合)、伊豆長岡温泉(組合)、下田温泉(民間)、城崎温泉(地方)、浜坂温泉(地方)、白浜温泉(地方)、三朝温泉(地方)、鹿野温泉(地方)、吉岡温泉(組合)、羽合温泉(組合)、岩井温泉(組合)、皆生温泉(民間)、三瓶温泉(地方)、湯村温泉(地方)、湯原温泉(地方)、湯郷温泉(民間)、湯田温泉(組合)、俵山温泉(民間)、道後温泉(地方)、二日市温泉(組合)、古湯温泉(地方)、島原温泉(地方)、天草下田温泉(組合)、日名久温泉(組合)、湯平温泉(組合)、入来温泉(地方)、吹上温泉(地方)、霧島神宮温泉郷(地方)の以上、96の温泉地となっている。
    ()の中は、温泉の集中管理の事業主体を示している。地方は地方公共団体(財産区、光栄企業体などを含む)、組合は組合等の団体が行っているもの、民間は民間企業等が行っているものである。
    温泉の多さにも驚かされるが、「え!この温泉も」と温泉狂が驚いたような温泉もある。
    しかし、大滝のように集中管理を行っているにもかかわらず、報告されなかった温泉もあることを考えると、日本全国に未報告の温泉があることが考えられる。
    写真は銀山温泉能登屋。温泉狂は銀山が集中管理になっていることを知らなかった。

  • 城崎温泉の集中管理

    かつての城崎温泉

    さて、これらの温泉地の中で、最も集中管理温泉として知られているのが、城崎温泉である。
    詳細は兵庫県豊岡市温泉課のWeb
    特徴的なのは、58℃の温泉が貯湯タンクより出発して、区域内4,364mの配湯管を通り一巡して帰ってくるという水道方式を採用している点である。
    同温泉は、財産区と既存温泉権者との間で、温泉権を巡る紛争が起こり、大阪高裁で和解によって解決したという特異な事例として、温泉権の研究で著名な川島氏もしばしば取り上げている。
    さらに川島氏は、城崎温泉の関係者から意見を求められ、それをもとに新しい条例が策定されたことに賛意を示しているが、青森県の大鰐温泉については、「既存の温泉権を無視しまた成分を異にする種々の温泉を全部集中混合しそれに川の水を加えて加熱した上で配湯するという集中方式は・・・あまりにも無思慮なものであることに驚きの念を禁ずることができなかった」と述べ、対照的な見解となっている。
    集中管理における権利の調停はなかなか厄介なもののようだ。
    写真は風情ある城崎温泉。

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