温泉に関する日々のネタ帳

Profile

プロフィール写真

温泉狂

温泉権と温泉集落を研究する傍ら、秘湯も時々訪ねたい温泉狂です。(T_T)
写真は大深温泉オンドル宿舎

雑記

温泉に関するコラム風の備忘録です。

温泉の定義

  • 温泉法における定義

    八九郎温泉温泉注意書き

    1948年に公布された「温泉法第2条」によれば、温泉の要件として、湯温が摂氏25度以上か、25度未満でも一定量の成分を持つか、どちらかであると定められている。
    温泉法 平成23年8月30日 法律第105号
    →写真は八九郎温泉温泉注意書き-この「八九郎温泉」は、公衆浴場法第一条に規定する入浴施設ではありません・・・・一切の責任を負いません。○○自治会-と書かれている。

  • 温度に関する定義

    玉川温泉源泉

    まず、温度に関する定義を見てみよう。
    『日本の温泉地』※文献い5によれば、「人間が冷水と温水を区別できる温度は摂氏34度であるといわれ、温泉医学的にはそれ以上の湧泉を狭義の温泉と称している。しかし、地表に湧出した温泉は次第に温度を低下させ、その土地の年平均気温に近づくので、世界各国ではその値が温泉の定義に採用されている」と述べられている。
    ということは、その国の年平均気温を超える水温を有する湧水が温泉と定義できると考えられる。
    『日本の温泉地』には、その例として、日本や南アフリカでは25度以上、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど西ヨーロッパ諸国では20度以上、アメリカ合衆国では21.1度以上などがあげられている。
    もうすこし細かく温度による温泉の分類を見てみよう。
    冷鉱泉 25度C未満、低温泉 25度C~34度C未満、温泉 34度C~42度C未満、高温泉 42度C以上となっている。
    これは日本の分類であるが、国際温泉学会の分類は、冷泉 20度C未満、微温泉 20度C~37度C未満、温泉 37度C~42度C未満、高温泉 42度C以上としている。
    沸かし湯などという言葉を忌み嫌う関係からか、温度の記載をわざと?省いて、成分のみの記載に止まっている例が多いが、温泉狂は34度C以上の温泉を主にねらって入湯しているので、湧出口の温度は必ず記載してもらいたいと思っている。
    →写真は玉川温泉源泉の「大噴」、湧出量(9000㍑/分)、泉温98度、PH1.3という日本を代表する源泉。

  • 泉質に関する旧来の定義

    別所温泉温泉分析掲示

    次に成分による分類を見てみよう。
    温泉は温度以外に一定量の成分を規定量以上含んでいれば、温泉法の規定によって、温泉と称することができる。
    それでは、古くは温泉を成分によってどのように分類していたであろうか。
    日本鉱泉誌上巻(1886刊行)※文献い1では成分によって次の5種に分類している。(甲)単純泉、(乙)酸性泉、(丙)炭酸泉、(丁)塩類泉、(戊)硫黄泉。
    一方、温泉須知(1937発行)※文献お1では、現行の温泉分類として下記の12種をあげている。
    単純泉、単純炭酸泉、土類炭酸泉、アルカリ泉、食塩泉、苦味泉、硫黄泉、放射能泉、硫酸鉄泉、緑礬泉、明礬泉、酸性泉の12種である。
    さらに、この著書の中では、1886以降なかったものでその後独立して追加された泉質に明礬泉と緑礬泉があると書かれ、1893年8月に明礬線が初めて報告されたとも書かれている。
    温泉法施行以後の泉質の扱いはどうだったであろう。
    1952年における温泉法第13条の運用の基準改正(温泉の禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の決定に当たっての通知)では、温泉の成分によって、単純温泉、炭酸泉、重炭酸土類泉、重曹泉、食塩泉、含重曹食塩泉、含食塩芒硝泉、芒硝泉、石膏泉、正苦味泉、鉄泉(炭酸鉄泉と緑礬泉)、酸性泉、酸性明礬緑礬泉、明礬泉、酸性明礬泉、硫黄泉(硫黄泉と硫化水素泉)放射能泉の17にわけている。
    1957年の鉱泉分析法指針(厚生省)では、11に分類している。『日本の温泉地』でも、山と渓谷社の『最新温泉ガイド』でも、この11分類を標準の泉質名として使用している。以下の11の泉質である。単純温泉、単純炭酸泉、重炭酸土類泉、重曹泉、食塩泉、硫酸塩泉(正苦味泉、石膏泉、芒硝泉)、鉄泉(緑礬泉・炭酸鉄泉)、明礬泉、硫黄泉(硫化水素泉、硫黄泉)、酸性泉、放射能泉
    →写真は大館市十二所近郊の別所温泉共同浴場の年代物の温泉分析額

  • 泉質に関する現在の定義

    八九郎温泉温泉分析書

    しかし、近年は各温泉地では上記のような旧泉質名を用いず、1979年から適用された鉱泉分析法指針(成分の化学学的組成に基づく)で示された泉質名が使われている。
    泉質分類の呼称については、IUPAC(純正及び応用化学の国際連合)の作成した表現に極力合わせたとのことである。
    詳しくは鉱泉分析法指針 PDF提供 その他温泉関係法令()内は旧泉質名。
    単純温泉(単純温泉)、単純二酸化炭素線(単純炭酸泉)、ナトリウム・塩化物泉(食塩泉)、ナトリウムー炭酸水素塩泉(重曹泉)、カルシウム(・マグネシウム)ー炭酸水素塩泉(重炭酸土類泉)、ナトリウムー硫酸塩泉(芒硝泉)、カルシウムー硫酸塩泉(石膏泉)、マグネシウムー硫酸塩泉(正苦味泉)、鉄泉(鉄泉)、鉄(Ⅱ)ー炭酸水素塩泉(炭酸鉄泉)、鉄(Ⅱ)ー硫酸塩泉(緑礬泉)、アルミニウム・鉄(Ⅱ)-硫酸塩泉(明礬泉)、硫黄泉(硫黄泉)、単純酸性泉 (酸性泉)、単純放射能線(放射能線)
    →写真は八九郎温泉温泉分析書

  • その他の定義

    玉川温泉湯ノ花採取用湯畑

    泉質以外にはどんな分類があるだろう。
    先日、ある人から、成分表の中に低張泉とあったけれど、低張泉というのは何ですかと聞かれた。
    昔の成分表の中にはこのような記載はなかったが、最近では緩和性低張高温泉などの記載が確かに見られるようになった。
    緩和性低張高温泉などの記載は、肌にしみるなどの刺激やその作用の強弱、または浸透圧に基づく温泉の分類であるが、このうち浸透圧に基づくものが、低張泉という分類である。
    温泉は各種の塩類が溶けている溶液なので、浸透圧をもっているが、人間の細胞液と同じ浸透圧(1lの水に8.8gの食塩を溶かした食塩水)をもつ温泉を等張泉としている。これを基準にして分類すると次の3つになる。
    ①低張泉:等張液より浸透圧の低いもの(8g/kg未満)
    ②等張泉: 等張液と同じ浸透圧をもつもの(8g以上~10g/kg未満)
    ③高張泉:等張液より高い浸透圧を持つもの(10g/kg以上)
    液性による分類というのもある。水素イオン濃度(PH)によって区分したものである。PH3未満を酸性泉、PH3以上6未満を弱酸性泉、PH6以上7.5未満を中性泉、PH7.5以上8.5未満を弱アルカリ性泉、PH8.5以上をアルカリ性泉が鉱泉分析法指針にあげられている。前掲の日本の温泉地では、PH2未満を強酸性泉、PH10以上を強アルカリ性泉としている。
    →写真は玉川温泉湯ノ花採取用湯畑

  • <ホーム<次へ

 

© 2012 onsenkyo. All rights reserved.